海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album Of The Day>Yumiko Morioka, “Resonance”

ピアニスト・盛岡夕美子が1987年に発表したデビュー・アルバム『Resonance』にまつわるすべてのものから大気を滲み出ている。このアルバムはGreen & Waterというレーベルから。「環境音楽」として知られる日本の音楽的ムーヴメントの中で発表された。1970年代にサンフランシスコ音楽学校で学んだ盛岡は、1980年代後期にはBrian Enoの『Ambient』シリーズの魔法に魅せられ、刺激されていた。「空中に漂う音を探し、それを空間と時間に混ぜ合わせていくの」と彼女は最近語っている

『Resonance』は盛岡の目標を実現している。ほぼ全編彼女の静謐でなめらかなピアノの演奏によって構成されているこのアルバムの中で辛抱強い音色が優しく柔らかなメロディに降り注いでいき、まるでゆっくりと落ちる瀑布のように輝いている。“Ever Green”では盛岡の晴れやかなコードが日の出を想起させ、“Round and Round”の明るい弾みは小さな町での幸せな生活のサウンドトラックのようにも聞こえる。『Resonance』はサッカリンにしてはあまりに思慮深く、ときにも逃しさをも感じさせる。“Moon Road”や“Moon Ring”のヘヴィな旋律は、Angelo Badalamentiによる『Twin Peaks』のピアノ主題歌と同じくらいメロドラマ的である。

それでも、『Resonance』は主に落ち着きとリラクゼーションにまつわる作品であり、サウンドを通じてストレスを軽減するものである。このアルバムは商業的な成功こそ収められなかったものの、ニュー・エイジ系のショップや病室内のBGMとして使われることが多かった。聞けばその理由がわかるだろう:一度聞けば、盛岡の音楽は我々の心配を、まるで川に溶け落ちていく氷のように溶かしてしまうのだ。

By Marc Masters · April 14, 2020

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