海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

<Bandcamp Album Of The Day>Jamie 3:26, “A Taste of Chicago”

ハウス・ミュージックの誕生した土地であり精神的なメッカでもあるシカゴで生まれたDJ/プロデューサーのJamie Watson(a.k.a. Jamie 3:26)はこの度、10年以上に渡ってダンスフロアをわかせてきたエディットをまとめたカタログを作り上げた。スイスのニュー・ウェイヴ・バンドYellowによる1980年のヒット“Bostitch”のヘヴィーなリワークからLoleatta Hollowayの愉快なディスコ・クラシック“Hit And Run”をダークに作り変えたものまで、Watsonはこんにちのダンス・ミュージックの中でも最も優れたリミクサーの一人として自身を確立している。

Watsonの最新作『A Taste Of Chicago』はシカゴのハウス・ミュージックの定番曲に敬意を払いながら、クラシック・ダンス・ミュージックをもう一度蘇らせる彼の才能をいかんなく発揮している。アルバムはBSTCの“Venus & Mars”の焼けるようなエディットで幕を開ける。刺激的なブラスとなめらかなジャズ・ギター、シャッフルしている矢継ぎ早のパーカッションが耳を満たす。“The Jungle (Jamie's Jungle Sounds Edit)”はオリジナルのヴォーカルを剥ぎ取り、奇妙でミニマルなバンガーをリスナーに届けている。WatsonはChip-Eによるアシッド・ハウスのクラシック“It's House”を磨き上げ、温かくも奇妙な、現代実験ダンス・ミュージックの一片に仕立て上げている。『A Taste Of Chicago』はシカゴのハウス・ミュージックの途絶えることのないヴァイタリティのさらなる証拠であり、この音楽の真の精神と密に接してきたプロデューサーの手にかかった時にこのジャンルが発揮する限りないポテンシャルを明らかにしている。

By John Morrison · March 25, 2020

daily.bandcamp.com