<Bandcamp Album Of The Day>Witch Prophet, “DNA ACTIVATION”
この『DNA ACTIVATION』において、トロントを拠点とするシンガー・ソングライター、Witch Prophetは個人的なアイデンティティを探求し、それを家族というものと文化的に自分が受け継いでいるものとが交差しているところに位置づけている。アルバムの1曲目、“MUSA”の転がるようなベースと光り輝くヴィブラフォンの上でWitch Prophetは「我々はここから何処に行くのだろう?」と歌う。「暗闇の中を落ちていく、そして光など見えやしないのに」
このアルバムのサウンドの青写真は多様なスタイルや異なる大陸にまたがっている。SUN SUNとの共同プロデュースによる埃っぽいヒップホップ・ビートはエチオピアン・ジャズの痕跡と同じところに置かれている。Witch Prophetはアムハラ語、英語、ティグリニャ語で歌い、楽曲(曲名はWitch Prophetの家族の名前からそれぞれ取られている)は驚くほどモダンでありながら明らかに伝統的な東アフリカのメロディからの影響を感じさせる。『DNA ACTIVATION』では、過去と現在は同時に発生しているのである。
“TESFAY”はタイトで泡立つようなベースラインとパリッとしたTony Allen風のドラミングを組み合わせ、Witch Prophetは自己顕示、そして輝くことについて歌い、Karen Ngによる巧みなサックスが彼女に寄り添っている。アルバムの中でも傑出している“DARSHAN”はスウィートでジャジーな子守唄で、Witch Prophetは息子に対する深く、変容していく愛を歌っている:「このような愛を感じたことはこれまでなかった/あなたは私を選び、私を変えてくれた/感謝している/なんて贈り物なの、なんて楽しみなの、私の愛しい男の子」“ROMAN”のリズムはゆるくて弾むようなところからぎっちり詰まったブーム・バップに変化し、繰り返されるピアノ・ループがまとまりを作っている。そして“MAKDA”では、Witch Prophetは聖書に出てくるエチオピアの女王・Makedaになりきって、自分の家族の歴史と文化的な血統を用いて黒人であることの素晴らしさを讃えている。『DNA ACTIVATION』は家族についての、スピリチュアリティについての、そして自己実現についてのアルバムであり、歴史的なもの、文化的なもの、個人的なものが結びつき、家系史と自伝が同一化された作品である。
By John Morrison · March 26, 2020