<Bandcamp Album Of The Day>Various Artists, “INTENTA: Experimental & Electronic Music From Switzerland 1981-1993”
DécaléレーベルのMatthias OrsettとMaxi FischerはLes Disques Bongo Joeと共同でこのチャーミングな「驚異の部屋」を編纂した。両レーベルは入念な発掘作業にフォーカスしていて、ここで彼らは80年代から90年代初期にかけて、お手頃な値段の商用シンセサイザーが世界中のホーム・スタジオを一変させたあの豊かな時代のスイス産エクスペリメンタル、ポスト・パンク、エレクトロニックのシーンを掘り起こしコンパイルすることにしたのだった。
これらのアーティストは当時彼らが手にしていた道具で、驚くほど異なることをやってのけている。方向感覚を失わせるような(それでいて少しジャジーな)ニュー・エイジを奏でるのはBells of Kyoto。視界から出たり入ったりするようにエレメントがフェード・イン/アウトを繰り返したり、頻繁にシンコペーションでよろめいたりしていなければ、ゆったりしたエレヴェーター・ミュージックにもなり得ただろう。奇妙な赤ちゃん声でのスポークン・ワードのヴァースを伴ったキャッチーなミニマル・ウェイヴを聴かせるCarol Richや、オーケストラ・ヒットと極端に圧縮されたスラップベースが特徴の、愉快に熟成したはちみつのようなスロウなシンセ・ポップを聴かせるAir Projectがいる。悲しいことにこのプロジェクトの製作中に亡くなってしまったSky Birdは不釣り合いなほどにシンプルなピアノのコード、MIDIのホーンの嵐、焦げるようなギターと忙しないドラム・マシンの上に不吉で陰謀めいたヴォーカルを乗せている。Kulu Hatah Mamnuaのトラックはパーカッションと言葉にならないチャント、そしてストリングに垣間見える民俗伝統に儀式的なおしゃべりが乗っている。Peter Philippe Weissの“Subway”は80年代のディスコ・ポップと恐ろしい内的独白がないまぜになっている。一つ一つのトラックにそれぞれの小さな世界が形成されていて、そうでありながらコンピレーションとしてこの作品は並々ならぬ意味を成している―物腰柔らかな偏屈者が、メインストリームの理解など求めずに可能性を切り開いていくような。それは実験的な芸術にはもってこいの条件ではないか。
By Jes Skolnik · March 11, 2020