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<Bandcamp Album Of The Day>Jeremy Cunningham, “The Weather Up There”

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jeremycunningham.bandcamp.com

2008年の住居侵入事件によって兄・Andrewが殺されてから12年後にリリースされたシカゴのドラマー/作曲家のJeremy Cunninghamの最新アルバム『The Weather Up There』は音像的にもリッチでありながら、悲しみと愛を探求するカタルシスに富んだ作品だ。アルバムの1曲目“Sleeper“は、Cunninghamの叔母が夢の中で見知らぬ人物の訪問を受けた話をしている録音から始まる。その夢の訪問者の正体を知りたがった彼の母親は尋ねる:「それはさよならを言いに立ち寄ったAndrewだったんじゃないかしら。私はそう信じるわ」“1985”のギターと電子ピアノはジャズ由来のポップのような、快活で遊び心のあるノスタルジアを作り出している。豪勢で広がったメロディを持つ内省的な“Hike”と混沌としていて凄惨な楽曲“All I Know”はこの『The Weather Up There』をほろ苦いものにしている。時にCunninghamの音楽は豪勢で楽観的で、ノスタルジアや記憶のようなクールで豊かな感情で描かれる。また時には『The Weather Up There』は感情にポッカリと空いた穴や、死や暴力が犠牲者だけではなくその家族や彼を愛していたコミュニティに対して与えてしまうことがあるトラウマについて思い出させる作品になっている。

By John Morrison · February 26, 2020

Jeremy Cunningham, “The Weather Up There” | Bandcamp Daily