<Bandcamp Album Of The Day>Sarah Harmer, “Are You Gone”
10年以上前にアルバムをリリースして以来、オンタリオのシンガー・ソングライター、Sarah Harmerは環境保護のための活動に専念してきた。ナイアガラの滝を保護するためのPERL(Protecting Escarpment Rural Land=急斜面の地域の保護)という団体を共同設立し、大資本のパイプラインの建設に反対のデモを起こし、きれいな水の透明性の重要さを主張してきた。しかしこのようなアクティヴィズムが彼女の中心的な関心となる前から、このオンタリオ出身のミュージシャンは様々なフォーク・ロックの系統を用いて―クラシック・ロック、フォーク、そして少しながらホンキー・トンクまで―彼女の周りを取り巻く環境に対する共感や切迫感を伝えてきた。
Harmerの新作『Are You Gone』はこのような現代の不安によって形作られた作品であり(それでも失望を前にしてそれを跳ね返すような強さも見せている)、このような共感の精神を前面に、中心に押し出している。彼女は未だにファンたちが好むであろう軽快なフォーク・ロックを作ってはいるが、この『Are You Gone』ではHarmerの楽曲は新たに予測不可能な雰囲気をまとっている。リード・シングルの“New Low”は化石燃料に賭ける学校が存在するような自暴自棄な世界を切り取ったスナップショットである。終わりにかけて震えるようなホーン・セクションが全面に躍り出てくるが、それはまるでこの状況のバカバカしさを強調しているようだ。
変形と不在がこの『Are You Gone』には広く見られる。Harmerは消えゆく記憶と季節の変化を回想する。“St. Peter's Bay”で彼女は彼の地でのほろ苦い夜のスケート中に友人の門出についてじっくり考える。その回顧は繊細に爪弾かれるギターによって支えられる。“Little Frogs”では自然界の驚異の楽しさを大事にしている。『Are You Gone』の楽曲は一貫として、希望の光を見つけるまで暗闇を凝視している:何もかもが儚いものであるが、それは決して乗り越えられないということを意味していない。Harmerの最大の強みはヴォーカルの信念と明確さである。『Are You Gone』は時にメランコリーな作品に思えるかもしれないが、自然環境を音楽的なパノラマに置き換えることによって、Harmerは立ち上がる強さを手に入れるのだ。
By Margaret Farrell · February 18, 2020