海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

<Bandcamp Album Of The Day>Mush, “3D Routine”

f:id:curefortheitch:20200213221216j:plain

mushband.bandcamp.com

イギリスの政治的・社会的な気候は、多くの点でアメリカのそれの鏡像となっている:ヘイト・クライムと暴力の興隆、社会扶助給付の削減、不適格な政治家、そして若者たちの希望がかつてないほどに乏しくなっていること。我々が普段目にするイギリス・アメリカを拠点とするアーティストたちが「我々の政治的現実に反応している」ように思える一方、リーズを拠点とする4人組Mushは批判精神にのっとったポスト・パンクの長い伝統を引き継ぎ、鋭い言葉と、自分の周囲の世界と同じくらい歪んだ音楽によって自分たちのフラストレーションを発散する用意ができている。

初のフル・アルバム『3D Routine』において、はMushは以前のEP『Induction Party』でのジャム感があり、よりロックンロール感のあるTrash Kitのようなサウンドから、より実験的な方向に向かっている。フロントパーソンであるDan Hyndmanのヴォーカルはほとんど衝動に任せられている:彼はほとんど一本調子で詰り、時に息もできないほどに苛ついている。『3D Routine』はエネルギッシュでアップビートな雰囲気で幕を開ける。長めの尺の一曲目“Revising My Fee”はドライヴするベースラインと終わりのない借金生活を嘆く歌詞が特徴の昔ながらのポスト・パンクである。最後の2分間でギターは音を曲げ、フィードバックを鳴らし、露骨なノイズになるまで、まるで競うように奇妙さを増していく。アルバムも中盤になると少し落ち着きを見せるようになり、ソフトな“Fruits of the Happening”やプログレ風のタイトルトラックなどが並ぶ。キャッチーな“Gig Economy”は明らかに突出した曲で、耳障りな無調のインストゥルメンテーションと不安定なヴォーカルを用いて、ほとんどなんの保護も受けない労働者でいることの混乱とナンセンスを切実に表現している。- Kerry Cardoza, Feburary 12, 2020

Mush, “3D Routine” | Bandcamp Daily