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<Bandcamp Album Of The Day>Forever, “Close to the Flame”

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forever-apoet.bandcamp.com

『Close to the Flame』は、Foreverという名義でポップ・ミュージックを作っているモントリオールを拠点とするヴォーカリスト・June Moonによる2作目のEPであり、感情を開示した作品である。セルフタイトルのデビュー作から3年経ってリリースされたこのMoonの最新アルバムは、決定的に自分を変えてしまった失恋の直後に自分を愛することの可能性を讃えた楽曲のコレクションだ。

『Close to the Flame』はモントリオールの音楽シーンの最愛の者たちに宛てられた/によって書かれたラブレターである:作中で紡がれているのはTOPSのDavid Carierreによる遊び心ある80年代風シンセ、プロデューサー・Patrick Hollandによるディスコ風味のディープ・ハウス、そしてDJ Ouriのパーカッシヴな自信である。これらのジャンル横断的なイースター・エッグの全面に立ちセンターを主張するのはMoonの幽霊のようなファルセットである。1曲目“Blur”で、銀色のハープの音色が支えるR&Bのビートの上でMoonは「あなたの頭の中にあるのは二つの目だけ」とからかう。“Make It Happen”ではトロントのラッパー・Just Johnの超スムースなライムがMoonのコーラスの中に包まれている:「立ち直れる、ほんとうの意味で変わる時が来た」とビートが戻る前に彼女は歌う。官能的な最後の曲“Adonis”では贅沢でダウンテンポなビートが明滅するストリングスに溶けていくと、Moonのハスキーなハーモニーが傷つきやすい弱さの感覚を伝えてくれる。

タイトルが示すように、このアルバムは長い暗闇の先に見える光に、燃えてしまうかもしれないという危険を顧みずに近づきたいという欲求を呼び起こすものである。『Close to the Flame』はリスナーをその生み出す力で魅惑して捉えて離さない―そう、永遠(forever)に。By Alex Westfall · February 20, 2020

Forever, “Close to the Flame” | Bandcamp Daily