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<Bandcamp Album Of The Day>Sotomayor, “Orígenes”

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sotomayor.bandcamp.com

ファンキーなDJグループ・Beat Buffet、そしてオルタナ・ロック・バンド・Jefes del Desiertoでのそれぞれの活動を経て、RaulとPaulinaのSotomayerきょうだいは2014年に名字を冠した名義での活動をスタートさせ、翌年にはデビュー作『Salvaje』をリリースした。メキシコシティを拠点とするこのグループには現在、鍵盤とギター、ベースを担当する2人のメンバーが加わっている。3枚目のフル・アルバムとなる『Orígenes』で、Sotomayorは複雑さを失うことなくダイナミックで気軽に楽しめるポップ・サウンドを作り上げることに成功している。そのレシピは? それは強力なポップ・ヴォーカルと、独創的でダンス由来のエレクトロニック・ビートの組み合わせだ。このグループの野心溢れるサウンドダンスホール、クンビア、メレンゲ、アフロビート、そしてそのほか様々なラテン音楽からの影響を混ぜ合わせたものであり、全編がスペイン語で書かれている。否定しがたい商業的な性質が感じられるが、それも際立ったソウルと共に我々に届けられる。

『Orígenes』の楽曲には催眠作用のようなものが感じ取れる。それはPaulinaのうっとりするような歌声によるところが大きく、その声は囁くような“Tu Cuerpo y el mío”から聴き手を支配するような“Latin History Month”に至るまで、作品の中で姿を変えていく。歌詞の繰り返しと常時鼓動しているパーカッションもその効果を高めている。容赦ないテンポとPaulinaの敏捷な歌唱、そしてキャッチーなホーンの軍隊を擁する“Menéate pa’ mí”が突き抜けているが、“Quema”のバウンシーなシンセとスピリットのグルーヴ、ヴォーカルの節回しなんかはSofi Tukkerを思わせる。アルバムの最後を飾る“Ella”は広がりを見せる曲である: よりアトモスフェリックで空間を埋めるようなビートによってペースはグッと下がり、Paulinaのデリバリーもそれに合わせてその前の曲よりも言葉を伸ばして発音している。それは全く新しいトーンであり、聴く側は今後の彼らの嗜好を想像してしまう。この曲はこれまでに彼らが航海してきた範囲にしっかりと区切りをつけ、来るべき未来の新たなフロンティアへと向かう、そんな曲だ。

By Nilina Mason-Campbell · February 13, 2020

Sotomayor, “Orígenes” | Bandcamp Daily