海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Palberta, “Palberta5000”

アンダーグラウンド・レーベル=Feeding Tubeからの初期のリリースの時点から、ニューヨークのアートスクールで結成されたパンク・トリオ=Palbertaの楽曲は縫い目から裂けていくようでありながらも、はっとさせるような斜に構えたポップ的瞬間へと融合していくようにも感じられた。彼女たちが不機嫌なノー・ウェイヴ・バンドのように数秒ごとにうねりくねっていく演奏をしていようと、13分間にも及ぶリズム・ボックスのグルーヴの上で笑い転げていようとも、このグループのガタガタの創作物をつなぎとめている接着剤となっているのが3パートのハーモニーである。彼女たちのボーカルは、終わりなき反復がもつその力をもってしてキャッチーさを獲得している。

彼女たちの最新作『Palberta5000』はこのバンドのローファイ的な出自を清純なプロダクションで塗り替え、メロディにより重点を置き、それぞれのメンバーの声もより分離がはっきりしている。それでもまだ「昔の」Palbertaのように聞こえる瞬間もある:“Big Bad Want” の神経質な不協和音、逆上したかのような “Hey!” (歌詞はこの曲のタイトルだけで構成されている)などがそうだ。“I’ll Take The Cow” は3拍子のワルツのリズムで揺れていき、涼しげなスロウ・ジャム“The Way That You Do,” での3人の優しい歌声はゼロ年代のインディー・バンド=Grass Widowを思わせる。アルバムの後半に入ると、Arthur Russelのディスコ組曲へのアンサー・ソングである “All Over My Face” が、転がるようなドラム・フィルとカウベルのブレイクによって押し出されていく。最後の “Before I Got Here” のホーンは楽曲に堂々とした雰囲気を与え、このグループの将来の可能性をまた一つ示唆している。短いランタイムにめまいがするほどたくさんのアイデアが詰めこまれたこの『Palberta5000』は、Wireの『Pink Flag』やMinutemenの『Double Nickels on the Dime』といった、パンクの目老番とされているような作品群と同じように聞かれるように設計されている。聞くたびに新しく好きになる楽曲――あるいは楽曲の一部分――を見つけることができるのだ。

By Jesse Locke · January 28, 2021

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