海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Various Artists, “Color De Trópico: Compiled By El Dragón Criollo & El Palmas”

南アフリカをディグする博学者=El PalmasEl Dragón Criolloはこの度、1966年から1978年にかけてベネズエラでリリースされた隠れた楽曲たちを拾い集め、初めてバイナルでリイシューする新しいコンピレーション『Color de Trópico』を発表した。この作品はクラシック・ファンク、サルサ、ジャズ・ロック、クンビア、グアヒーラ、そしてその他の舞い上がるようなトロピ・ディアスポラ混交音楽の見事な交差点を描き出し、ベネズエラの最も実り多く冒険的な音楽的時代の一つのスナップショットを紡いでいる。

『Color de Trópico』は聞いていく内にどんどんと多幸感が増幅していく作りになっていて、Los Dartsのメランコリックな別れの歌 ”El Despertar” で始まり、次第にHugo Blancoのヒプノティックな ”Guajira Con Arpa” へとギアを上げていく。この曲では聞くものを夢中にさせるような金管楽器とパーカッションが流麗なハープのリードと対置されている。Los Caprisの ”Gaita Universal” はリスナーの注意をひこうと楽しそうに踊るようなガイタ、アコーディオン、ホーンが競い合い、古風な街のオーケストラとともに行進しているかのような印象を与える。最後のまとめに入る前に、『Color de Trópico』はベネズエラの先駆的な奇妙な楽曲にも光を当てる。”Socorro Auxilo” では楽しげなソウル・ブラスがGermán Fernandoの異質なプロト・パンクなボーカルと激突し、最後の2曲、Grupo Alemandraによる ”Tu y Yo” とTulio Enrique Leónによる ”Bimbom” からは渦を巻くようなサイケデリア、スペース・ファンク、風変わりなクンビアの香りがする。

見事にキュレ―トされ、ベネズエラの影響力のある文化的な絶頂への敬虔な姿勢が伺えるこの『Color de Trópico』は、より面白い未来を作り上げるためには過去を学ぶべきであるという、差し迫ったリマインダーである。偉人たちを湛え、彼らから学び、そして1969年のようにパーティーをしよう。

By Richard Villegas · December 04, 2020

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