海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Lon Moshe & Southern Freedom Arkestra, “Love Is Where the Spirit Lies”

ジャズは常にスピリチュアルな営みであり続けているが、1960年から70年代になると、ブラック・パワー運動の政治的/スピリチュアルなコンシャスネスが自然と音楽に浸透し始めた。Alice ColtranePharoah Sandersの瞑想的な作品からAlbert AylerやGary Bartzの無我夢中な炎に至るまで、1970年代のジャズはスピリチュアルなものとの深いつながりで大まかに特徴づけられる。

DJ兼プロモーターのJimmy Grayとサックス奏者のJames ”Plunky” Branchが自分たちのレーベル=Black Fireを1975年に立ち上げた際、彼らはミュージシャンが完全なスピリチュアルな次元を自由に表現するための場所を開放した。その取り組みを行ったミュージシャンの1人が、ヴィブラフォン奏者のLon Mosheである。Moshe & The Southern Freedom Arkestraのアルバム『Love Is Where The Spirit Lies』は、多くの優れたジャズ音楽家たちがより高みにある力を求めて音楽を用いていた時代の縫製のような録音を集めたものである。

このアルバムは、先祖から使わるやり方とのつながりを復活させることで黒人の自己実現を呼びかける、荘厳で仄暗いスポークン・ワード ”Prayer for Saude” で幕を開ける。自由でありながら正確無比な演奏が駆り立てる中、詩人のNgoma Ya Uhuruが語る。「東を向けば創造主あり、何世紀も前に失われた我々の古き信仰よ」。”Low Ghost” のドライヴするポスト・バップの抽象化や、ドリーミーな傑作 ”Ballad For Bobby Hutcherson” に至るまで、挑戦的な音楽のコレクション、そして敬虔な精神の提示として捉えた時、『Love Is Where The Spirit Lies』は等しくパワフルなのである。

By John Morrison · January 12, 2021

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