海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Bessie Jones and the Georgia Sea Island Singers, “Get In Union”

伝説的なアメリカ人フォーク・シンガーであるMary Elizabeth "Bessie" Jonesは1902年生まれ、アフリカで奴隷となり5人の兄弟とともにアメリカに運ばれてきたミュージシャンであった祖父のJet Sampsonから若い頃に楽曲や民話を学んだ。彼女は人気フォーク・ミュージシャンとなり国中でその歌声を披露し、やがて1968年ワシントンでの貧者の行進や1976年のジミー・カーター大統領就任式など、有名なギグでも歌うようになった。

1960年代、長年のツアー、ライヴ生活ののち、JonesはBig John Davis、Henry Morrison、Willis Proctorと共にGeorgia Sea Island Singersを結成する。60年代初期に録音された『Get In Union』ではこのグループの最盛期における優れた音楽的能力を聞くことができる。このアルバムに収録されているのはアメリカ沿岸南部の伝統的ブラック・アメリカン・フォークやゴスペルの楽曲である。1曲目の“Sheep Sheep, Don't You Know The Road”はゴージャスなアカペラ・ゴスペル曲だ。Jonesがリードを務め、ゆったりとスウィングする歌声で他のシンガーのハーモニーを誘う。“Let Me Fly”は来世での救済について歌った、美しい詩情を持つ曲である。「約束の土地にシスターがいる/彼女の手を握るまで止まるつもりはない/手を握らなくても良い、ただ彼女に約束の土地で会いたいのさ/主よ、我に翼を!」“Once There Was No Sun”は神、そして創造を賛美する、感動的な祈りの瞑想である。芸術様式としてのゴスペル・ミュージックは信仰と救済という二つのスピリチュアルな体験を主に扱ったものであるが、“You Better Mind”、“Plumb The Line”、“Prayer”のような楽曲は、これら二つの体験に必要である降伏と信心という深い感覚をはっきりと表現することのできる、Jonesとグループの能力をはっきりと示している。

By John Morrison · June 10, 2020

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