海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Salt Cathedral, “Carisma”

2016年、ブルックリンを拠点とするコロンビア人デュオ=Salt Cathedralは単純で、それでいて物事の見方が変わってしまうような重要な気づきを得た:人々はダンスをしたがっている! 当初はNicolas Losadaによる知的でLittle Dragon風のプロダクションとJuliana Ronderoによる魅惑的なソングライティングとひらひらしたヴォーカルによって知られていたこの二人組は、ダンスホールやソカのリズムを吸収し、そのサウンドベッドフォード=スタイベサント地域のカリブ系の住民たちの間にとどろかせている。ボゴタで過ごした十代の時期に養われたレゲトンやチャンペータといった音楽に新たな影響をぶつけるかのように、このバンドはLee ”Scratch” PerryAssassin、Big Freediaといった強力な面々との一連のコラボ・シングルをリリースし、二人によるつやのあるバンガーに知恵や文化に対する尊敬の念を吹き込んだ。そして今回、冒険的な新しいサウンドの研鑽を経たSalt Cathedralは、ついに輝かしいデビュー・フル・アルバム『Carisma』のヴェールをとった。

アンセム風の1曲目”Rude Boy”はバンドの現在のサウンドを決定づけたカリブ系の住民たちへのラブレターであり、”Muévelo”でのLosadaのコーラスはパナマ人でレゲトンのパイオニア=El Generalに敬意を表している。Ronderosは舞い上がるような声楽の体操と無縁ではなく、チャンペータ風の”Que Corra el Agua”や悲しげで懺悔するようなポップ”A Second Chance”でその才能をいかんなく発揮しているほか、『Carisma』はLosadaをギターやコントローラーの背後から連れ出して前面に押し出してもいる。消えつつあるロマンスを切迫感ある筆致で描いた”Paris”で、Losadaは感動的なレゲトン・ラップ――ヴォコーダーでマスクをかぶってはいるが――を披露し、相方の後ろではなく、相方と一緒にセンターを張っている。『Carisma』の中で、Salt Cathedralはデンボウ、バイリ・ファンキがパンパンに詰まったパン=アメリカン音楽のバイキングを提供している。”How Beautiful (she is)”ではクイーンズのソウル・シンガー=duenditaとブラジルのスーパースターMC=Bin Ladenをフィーチャーし、夏の夢にぴったりの明るく朗らかな曲となっている。

By Richard Villegas · May 12, 2020

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