<Bandcamp Album of the Day>Melenas『Dias Raros』
スペインのパンプローナを拠点とする4人組Melenasは2作目となるこの『Dias Raros』において、2017年のセルフタイトル・リリースで聴かせていたフラワー・パンクから退き、同世代であるPeel Dream Magazineのような知的なインディー・ポップの反復を目指し、輝きに満ちた心地よいジャングル・ロックを演奏している。彼女たちの楽曲はさらにクラウトロックや、性急なシューゲイズの影響も受けている――デビュー作でもチャーミングな効果をもたらしていたガレージ・ポップ風のオルガンをこの2作目でも喜んでミックスに取り入れてはいるが。『Dias Raros』はパステル調のポスト・パンクの一種である――ムーディなドローン、スペーシーなギター、そしてモータリック・ビートがキラキラとした輝きや甘さ、明るさで優しく包まれているような作品なのだ。
オープニングの“Primer Tiempo”でこのバンドはすぐさま開かれた新しいサウンドへと飛び込んでいく。物憂げながらもかわいくすましたこのポップ・ソング――ドローンが鳴り響いてはいるが――は楽しげなキーボードと催眠的な和音によってドライヴし、それは『Dias Raros』全体に漂いつづける曇り空のようなアンビエンスを想起させる。よりパンクに寄った楽曲においても、Melenasは優れたヴォーカル・アレンジメントの才能を見せつける。“29 grados”のように広大な曲や“3 Segundos”のように晴れやかな曲において、バンドメンバーたちの声は楽器の演奏の優しいタッチを補完するように幻惑的な輪を描く。ドリーミーな雰囲気が音楽全体を支配するようになると、『Dias Raros』は凪の感を漂わせる。しかし、バンドに寄る強力なソングライティング、耳に残るフック、そしてミッド・テンポの曲(ドライヴするような“Los alemenes”や“Ciencia ficcíon”が印象的だ)を後半に配していることによって、楽曲同士が溶け合ってしまうことを防いでいる。最後から2つ目のグルーヴィーな“Ya no es verano”は最も強力な曲で、80年代中期のR.E.M.のメロディックな叙情性と同時期のUKインディー・ポップが持っていた古典的なシャンブリングの完璧なバランスを見せていながらも、どちらにもノスタルジックすぎるきらいはない。
By Mariana Timony · May 04, 2020