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<Bandcamp Album Of The Day>24-Carat Black, “lll”

1973年、オハイオ州シンシナティのファンク・ソウル・アンサンブル、24-Carat Blackがデビュー・アルバム『Ghetto: Misfortune's Wealth』をリリースした。伝説的なStaxレーベルの刻印が刻まれていたにもかかわらず、このアルバムはすぐさま歴史のごみ箱行きが決定してしまった。近年、その作品はディガーやサンプリング好事家の間での暗黙の了解として共有され、再評価の機運が高まっていた。Isaac Hayes、The Staple Singers、Jackie Wilsonらを手がけた野心溢れるプロデューサー・Dale Warrenによるその作品は、ドリーミーかつ社会的・コンシャスなソウルが聞ける一枚である。Warrenが1994年に亡くなってしまった:長年の間、『Ghetto: Misfortune's Wealth』が24-Carat Blackにとって最初で最後の作品であると思われていた。しかしWarrenの80年代のデモの発見がこの24-Carat Blackのセカンド・アルバム『III』のリリースにつながったのである。

Warrenがレコードをカットしていた倉庫で発見された『III』は、24-Carat Blackが歩むはずだった、大変優れていながらも未完成だったチャプターである。ドラマティックなピアノで幕を開ける“I Need A Change”のギャロップのようなパーカッションと繊細に絡み合うヴォーカル・ハーモニーを聴けば、Warrenはこのグループのデビューの際に確立した創造性をさらに高めようとしていたことは明らかである。”Skeleton Coast”は伝統的なアフリカの打楽器と美しいピアノの演奏が組み合わされることにより、Mavin Gayeが70年代初期に探求していた領域に似ているグルーヴと雰囲気を醸し出している。このアルバムを締めくくるグルーヴィーで楽観的な”Someone To Somebody”に差し掛かるころには、『III』の発見はラッキーなアクシデントというよりは、完璧に時機を図った神意のようなものに感じられてくる。

By John Morrison · April 21, 2020

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