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<Bandcamp Album Of The Day>Adrian Younge and Ali Shaheed Muhammad, “Jazz Is Dead 001”

『Jazz Is Dead 001』の背後にあるコンセプトは現代のプロデューサーであるAdrian YoungeとAli Shaheed Muhammadを一連の尊敬されているジャズ・ミュージシャンと組ませ、60年代や70年代に彼らが使っていたオリジナルのヴィンテージ機材を用いてフレッシュなトラックを作るというものである。この任務は2人にとって自然なことだった:ロサンゼルスを拠点とするYoungeは自分の音楽を砂っぽいレトロな雰囲気でコーティングすることに定評があり―彼のディスコグラフィーには存在しない60年代のブラック・エクスプロイテーション映画のサウンドトラック『Something About April』というものもある―、Shaheed MuhammadはA Tribe Called Questのメンバーとして、ディープなジャズのループをゴールデン・エラのヒップホップ・トラックに見事に再利用してきたということで知られているからだ。

このプロジェクトは伝説的なヴィブラフォン奏者Roy Ayersがメロウなシンセと疾走するスネアと並走する“Hey Lover”で幕を開ける。サックス奏者のGary Bartz―Art BlakeyやMcCoy Tynerのグループで演奏していたこともある―は“Distant Mode”の神経質なパーカッションに牧歌的なメロディーを付け加え、ブラジルの楽団Azymuthは燃えるような“Apocalíptico”に猛烈なサイケ・ロック風の装飾を施している。さらに、マルチ楽器奏者のDoug Carnは“Down Deep”をあの伝説的なレーベル・Black Jazzのカタログにも違和感なくフィットしそうな天空のジャズ・トラックに仕立て上げるのに貢献している。レトロなヴァイヴスをモダンなレコーディングにつなげるという試みは多くの場合薄っぺらく聴こえる結果になることが多いが、『Jazz Is Dead 001』はパリッとしたエネルギーを持ち、それは同時に過去をリスペクトしている。

By Phillip Mlynar · March 20, 2020

Adrian Younge and Ali Shaheed Muhammad, “Jazz Is Dead 001” | Bandcamp Daily