<XXL Magazine和訳>カニエ・ウェストと宗教の関係を紐解く
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カニエ・ウェストはゴッド・コンプレックス(訳注:自分に神のような万能の能力があると信じて、尊大に振る舞う心理状態)の持ち主である、というのは少し控えめな言い方かもしれない。Yeはライムを駆使して幾度となく、如何に自分のことを高貴な人間であると考えているか証明してきた。
しかし、ことに宗教となると、このラップスターの作品は有神論的なテーマが多く使われている。これは彼の神聖な信念はいまだに本物であるということの証左である。そう、カニエ・ウェストは複雑な男なのである。
2019年、ファンたちは再びかすかな変化を目撃している。2018年11月に発表が予定されていた『Yandhi』のリリースが延期になった少しあと、カニエは毎週のサンデー・サーヴィス(日曜礼拝)を開始した。クワイアとライヴ・バンドと共に行うラップ/ゴスペルのジャムセッションだ。聖霊を降臨させたコーチェラでのパフォーマンスのあと、カニエが自分の教会を持つことを考えていることが明らかになった。
「彼は教会を持つことについてかなり詳細なプランを話した」と情報筋は語る。「それは伝統的な、賛美歌や説教みたいなものにはならない。そのかわりに芸術や相互自愛のコミュニティを通じて人々とイエス様を向き合わせるようなものになるだろう。また彼は自分の子供にも信心深く育ってほしいらしく、彼自身が信仰に生きることはそれを達成する最良の方法だろう」
Yeezyが完全にカーク・フランクリン化しようとしている今、XXLではカニエ・ウェストと宗教の関係について振り返る。
"Jesus Walks"
2004年2月
カニエは2004年のデビューアルバム『The College Dropout』からシングル「Jesus Walk」をリリースする。ARCクワイアによる「Walk With Me」を引用したこの曲で彼は神の力を助けに自らが置かれている状況に意味を見出そうとする。また、純粋なヒップホップをサポートしてくれない音楽業界にも牙を向ける。
「悪魔が俺をくじけさせようとするから神は俺に道を示した/転ばないように、今祈るはただそれだけ」彼はコーラスでこうラップする。「俺の間違いを正すため、俺は今なんだってできると思ってる/俺は神と話がしたい、でも怖いんだ/だって長い間俺たちは話をしてこなかったから」
“Two Words” Featuring Mos Def, Freeway and the Harlem Boys Choir
2004年2月
Mos DefとFreewayと共演した『The College Dropout』からのシングル、「Two Words」。The Harlem Boys Choirをトラックに招き、より宗教色を増している。
イエス・キリストの姿で『Rolling Stone』誌の表紙に登場
2006年5月
2006年5月にカニエは『Rolling Stone』誌の表紙に、イバラ冠を被ったイエス・キリストの姿で登場した。高名な写真家デヴィッド・ラシャペルによって撮影されたこの写真は賛否両論を招き、キリストを冒涜するものだと言う者もいた。
「G.O.O.D. Fridays」の開始
2010年8月
カニエは自身のレーベルから毎週楽曲のリリースをする「G.O.O.D. Fridays」を開始した。この名称はキリストの磔刑の日である「Good Friday」が由来であり、リリースされた楽曲群の中には「Lord Lord Lord」や「Christmas in Harlem」といったタイトルのものが含まれていた。
"No Church in the Wild"
2011年8月
カニエはジェイ・Zと共にアルバム『Watch The Throne』をリリースし、「No Church In The Wild」がシングルとしてリリースされた。この曲は伝統的な宗教の教義に対する反発を歌ったものである。「我々は新たな宗教を作り上げた/赦しがあればそれは罪ではない」と彼はスピットしている。
“New God Flow” Featuring Pusha-T
2012年7月
カニエとプシャ・Tは『Cruel Summer』からのシングル「New God Flow」をリリースした。この二人が2013年のXXLベスト・ビート賞を受賞したトラックの上で神々しいライムを堂々と披露している。
「イエスの名のもとに、聖歌隊に歌わせよう/"I'm on fire"と、リチャード・プライヤーも言ってただろ/そして侵略してくる奴らを全員抹殺してやる」とYeはスピットしている。
2013年のMet Galaで"I Am A God"を初披露
2013年5月
ニューヨークで行われた2013年Met Galaにおいてカニエは新曲「I Am A God」を初披露した。セルフボースト曲であるこの曲の中で彼は自身が神の地位に座っていると宣言した。
「俺は神だ/神に仕える男だとしてもだ/俺の人生は神の手の中/だから神を弄ぶべきじゃない」
アルバム『Yeezus』のリリース
2013年6月
カニエは6作目にして当時かなりの議論を呼んだアルバム、『Yeezus』をリリースした。言うまでもないがタイトルはジーザスをもじったものであり、シングル「I Am A God」が収録されている。
『Yeezus』のツアーにキリストを登場させる
2013年10月
カニエは2013年10月、『Yeezus』ツアーをシアトルで開始した。このショーケースにはスペシャルゲストがいた。イエス・キリストである。まあ、もちろん本物ではないが。Yeは毎回のショーでイエスの格好をした男をステージ上に上げ、心と心の対話を行った。
ファンが新しい宗教にカニエ・ウェストの名前をつける
2014年2月
あるファンが「Yeezianity」という、カニエ・ウェストに基づいた新しい宗教を興した。
「Yeezusとは、カニエが神の領域にまで上り詰めたときのことを指し、私はそれによって我々全員がそうするポテンシャルを持っていると感じたんだ」と創設者は語る。「それがこの宗教を立ち上げた理由であり、将来的に我々はカニエや彼のおどけた言動のことは忘れてしまうかもしれないが、そのかわりに彼のメッセージに焦点を当てることになるだろう」
フォロワーは「5本の柱」と呼ばれる、以下のルールを遵守することになる。
1. 全ての創造物は全員の利益のためのものでなければならない。
2. いかなる人間の自分を表現する権利も抑圧されてはならない。
3. 金銭は交換のための手段以外には意味を持たない。
4. 人間は欲するもの、必要なものなら何でも創造する力を持っている。
5. 全ての苦しむ人間たちは、人間の創造力を刺激するために存在している。
カニエを磔刑を受けるイエスになぞらえた壁画が出現
2014年4月
ロサンゼルスで、匿名のストリート・アーティストがカニエ・ウェストを磔にされるキリストになぞらえた壁画を描いた。それが聖金曜日に現れたのは偶然ではないだろう。画家の署名はなく、下部に「新しい救世主か?」とだけ書かれていた。
カニエ、大聖堂の建設を予定か
2014年8月
Yeが家族のために特定宗派に属さない大聖堂を建設することを考えているというニュースが伝わった。
「彼はこの教会に母親へのトリビュートとしての礼拝堂、カニエ、キム、娘のノースを描いたステンドグラスを組み込みたいと思っている」と情報源が明かした。カニエはこのプロジェクトの始動のために500万ドルを貯蓄したと言われている。
カニエの娘・ノース、イェルサレムで洗礼を受ける
2015年4月
カニエ・ウェストとその家族は聖地・イェルサレムに赴き娘・ノースの洗礼を行った。儀式はアルメニア人地区にある、12世紀に建立された聖ヤコブ主教座聖堂で行われた。
カニエが『The Life of Pablo』をゴスペルのアルバムだと発言
2016年2月
当初は『So Help Me God』(後に『Swish』、さらに『Waves』)とされていたカニエの7枚目となるアルバムのタイトルが『The Life Of Pablo』と定められた。ビッグ・ボーイのラジオ番組でのインタビュー内で、彼はこのアルバムを「カース・ワードをふんだんに用いたゴスペルのアルバムだ」と発言した。
このアルバムはゴスペル風の「Ultralight Beam」や「Father Stretch My Hands Pt. 1」を収録していた。更にカニエはアルバムタイトルの由来は聖書に登場するパウロであることも示唆している。
“Ultralight Prayer”
2016年3月
『The Life of Pablo』の発表から1ヶ月後、カニエは新曲「Ultralight Prayer」をリリースした。これは『Ultralight Beam』のリミックスであり、ゴスペル歌手カーク・フランクリンと彼のグループ・The Familyをよりフィーチャーしたものとなっている。
ロンドンの教会がカニエのリリックにインスピレーションを受ける
2016年5月
ロンドンはホーンチャーチにある聖アンドリュー教会がカニエのリリックを入口に飾った。ウェストとポール・マッカートニーによる2014年の楽曲「Only One」の「君は完璧ではない、でもそれは君の間違いではない」という部分が使用された。
「偽りの偶像」の像がハリウッドに出現
2017年2月
芸術家プラスティック・ジーザスによる「偽りの偶像」と題されたインスタレーション作品がカリフォルニアはハリウッドに出現した。銅像はオスカーのトロフィーをモチーフにしたもので、カニエ・ウェストがイエスのように磔にされている。
カニエがイエス・キリストとのつながりを取り戻す
2018年12月
カニエはチャンス・ザ・ラッパーのおかげでイエス・キリストとの関係を取り戻したことを認めた。
「俺がどれだけ幸せで俺の家族がどれだけ強いか見て欲しい」と彼はツイッター上で述べている。「神の愛とご加護によって俺たちは更に強くなったんだ・・・チャンスのおかげでルーツやキリストへの信仰心を取り戻すことが出来た」
カニエが日曜礼拝をスタート
2019年1月
カニエが後に毎週行われることになる日曜礼拝のリハーサルを開始した。彼の妻、キム・カーダシアンがジャムセッションの様子をインスタグラムのストーリーにアップしている。映像では「Heard 'Em Say」「Father Stretch My Hands Pt. 1」や「Lift Yourself」「Reborn」などのゴスペル風のトラックの中でカニエが聖歌隊全体を指揮している様子が見れる。
カニエと112がクリスチャン音楽を共作
2019年1月
R&Bグループの112のメンバー、スリムがカニエとクリスチャン音楽を制作していることを明かした。
スリムの説明はこうだ。「カニエは音楽の天才だ。彼はアルバムを丸々ボツにしたりもする。でも起こっていることは全て、神の望みで起こっていることなんだ」
「カニエは今とてもいい場所にいる。もっとスピリチュアルなことについても話をしているところだけど、本当にいい場所にいるんだ」
カニエが2019コーチェラで日曜礼拝を披露
2019年4月
コーチェラでの日曜礼拝特別パフォーマンスによってカニエは観客を教会に連れ込んだ。野外での長いパフォーマンス中、カニエと聖歌隊は伝統的なゴスペル曲や彼のシングル曲のミックスを披露した。更に新曲「Water」も初披露された。
カニエが自身の教会を始める可能性
2019年4月
コーチェラでのパフォーマンスに引き続き、カニエが音楽とスピリチュアルへの愛を実現できる場として自身の教会を設立することを考えているというニュースが飛び込んできた。
「カニエについては好き放題言ってもらって構わないが、彼は本当に支援を必要としている人を助けようとしているんだ」と情報源は語る。「彼はおそらく、打ちひしがれる経験や癒やしの必要性についてみんなよりも理解している。彼は音楽が人を癒す力を信じているが、失望や諸問題について神が人々を癒やしてくれるということもまた信じているんだ」