<Bandcamp Album Of The Day>Master Boot Record, “Floppy Disk Overdrive”
コンピューター中毒の“メタルチップチューン”作曲家のMaster Boot Recordによる最新作『Floppy Disk Overdrive』はこれ以前の7作の包括的なリブートのように感じられる。ゲーム・プレイはいつもどおり―ヘヴィ・メタルのフックとネオクラシカル風の目配せが高度なメロディ的正面衝突を起こす―だが、完成度は全く別のレベルに到達している。“ANSI.SYS”の行進のようなリックと全力な初手から、“HIMEM.SYS”の多色の動きと痙攣のような最終ステージに至るまで、それはまるで8ビットのピクセルと8KのXbox波の違いである。
そのことの多くは、MBRの孤独なプログラマーが生成ソフトに巧妙に頼った日和見的なハックではないということに関係している。彼は子供の頃にピアノのレッスンを受けていたれっきとした音楽家であり、メタルのアンダーグラウンドのシーンにより過激な部分を見つけてからは歌とギターに転向したのである。コンピューターに対する深く、途絶えることのない愛と共にこの特異なスタイルを何十年も磨き続けた結果がこれである。Slayerであると同時にStravinskyでもあるような(少なくとも精神の上では)、焼け焦げた地球にまつわる、目をくらますような交響曲。“EDIT.COM”や“RAMDRIVE.SYS”のような落ち着きのない楽曲はじっと座っていることを拒み、アルバム1枚分はあろうかというアイデアが曲がりくねった8分間の中に詰め込まれている。
すべての時間の変化を追跡することに意味はない:打ち負かす価値のあるゲームがすべからくそうであるように、この『Floppy Disk Overdrive』という作品があなたを洗い流すに任せたほうが良い。この一枚のアルバムはソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』のサウンドトラック(ピアノ主導の楽曲と弦楽器のコンチェルトを並んで聴けるのはSquarepusherやAphex Twinと並んでここしかないはずだ)からメタリックな”speedrun(訳注:ゲームの「やりこみ」を意味する語)"音楽までのすべてをほのめかしている。ちくしょう、“DBLSPACE.EXE”の始まりはDanzigのようにさえ聞こえるじゃないか。『Floppy Disk Overdrive』の最後には、たった一つの問いが残される。もう一度プレイしますか?まあ、うん。
By Andrew Parks · March 27, 2020
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