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<Bandcamp Album Of The Day>Oranssi Pazuzu, “Mestarin Kynsi”

フィンランドブラック・メタル・バンドOranssi Pazuzuの5枚目となるアルバム『Mestarin Kynsi(Master's Nail)』は表面上潔癖の人や戦争神経症の人におすすめできるものではない。アニメのように聞こえるほどシューシューと叫ぶヴォーカルがサイケ〜インダストリアルの狂気を切り裂き、ウォー・ドラムの一斉射撃と極悪非道なノイズの殺到が交差している。しかし、公正に、そして楽しげにトチ狂っている『Mestarin Kynsi』は、世の中は見かけほどまだ終わってないー人類が現在直面しているパニック状態の中でもーということを思い出させてくれる作品である。

Oranssi Pazuzuはその始まりからずっとブラック・メタルという音楽を書き換えてきた:2016年の驚くべき『Värähtelijä』はアストラル・ジャズを向こう見ずに突っ込みNeu!を投影し、風変わりな口ひげがソリッドなメタルコアの周りをゆっくりと渦巻いていた。あのアルバムが1時間を超えるものであったのに対し、『Mestarin Kynsi』は同じ情報を無慈悲な50分間の音楽に凝縮している。“Oikeamielisten”は脅すようなギターとストリングスの小曲で幕を開け、そのあとFenrizも悲鳴を上げるような先祖返り的で好戦的な姿勢で突き進んでいく。“Uusi Teknokratia”は唸り声を上げながらさまよい歩き、ガムランミニマル・テクノ的解釈へと昇華される。“Kuulen ääniä maan alta”を縁取っているキーボードはまるで作り物の悪魔の角をかぶったRuskoがバンドの後ろに隠れてくすくす笑っているかのようである。

これらのミスディレクションを経て、Oranssi Pazuzuはフィナーレである“Taivaan Portti”の土台へと落ち着いていき、ブラック・メタルの基礎へと突き進んでいく。しかし彼らは繰り返される同じパターンのブラスト・ビートとトレロモ・ギターの周りに凍てつくようなシンセサイザーを渦巻かせている。それはまるでメタルのために再設計されFaustによって補強された、Rhys Chatham's Guitar Trioのような快楽的なミニマリズムである。作品が終わると、Oranssi Pazuzuはーもしかしたらあなたもそうかも知れないがー、息も絶え絶えに倒れ込む。これは端から端まで、美しい狂気である。

By Grayson Haver Currin · April 16, 2020

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