<Bandcamp Album of the Day>Various Artists, “Saving For a Custom Van”
Adam Schlesingerは際立った才能を持ったソングライターでありヴォーカリストであった。その直截的なデリヴァリーはすぐに彼だとわかる。彼は恐ろしい才能の塊で、彼のバンド=Fountains of Wayne、Ivyは商業的な利益としては地味なものであったが、Schlesingerのソングライティング技術によって、その両方は他のソングライターに愛される存在となった。彼自身は非凡な才能の持ち主であったが、彼の才能を最もよく伝える証明は、他の人が彼の歌を歌ってもどれだけ素晴らしいかということである。彼が映画『すべてをあなたに』やTVドラマ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』(どちらも音楽作品)の音楽を書いて最も成功を収めたのはぴったりだと言える。
『Saving for a Custom Van』は、Covid-19の合併症でこの春に52歳で亡くなった、この多作なソングライターを称える広範なコンピレーションである。インディー・レーベルであるFather/Daughter RecordsとWax Nine Recordsの共同リリースであるこの包括的なコレクション――売上はMusiCareのCovid-19救済基金に寄付される――はヒットから隠れた名曲まで、ポップ・ソングから映画のスコアまで光を当てている。スタイル的には、Schlesingerは折衷主義である。彼の作品はポップ・パンク、シンセ・ポップ、フォーク、そしてブロードウェイ風のものまで多岐にわたり、このコンピレーションもそれに倣っている。インディー・ロック職人のNada Surf、Ted Leoがいて、ポップ・パンクのマエストロのMotion City Soundtrack、Jeff Rosenstock、Charly Blissがいれば、Prince Daddy & the HyenaやJust Friends同時代のエモ勢、Sad13やField Mouseのような「なんとなく」インディー・ロック・バンドな人たちも参加し、さらには自身の回顧録『The Bedwetter』をミュージカル化する際にSchlesingerと共演したコメディエンヌ=Sarah Silvermanも参加している。
ここに集められたキャストはSchkesingerの遊び心あるユーモアと悲しみのバランスを立派に表現しているが、その中でも際立っている楽曲というのは今回演奏しているバンドのために書かれたのではないかと思わせるような楽曲たちである。Remember SportsはSchlesingerがゼロ年代半ばのポップ・パンク・バンド=The Click Fiveのために書いた“Just the Girl”を取り上げているが、この分厚いシンセ・ポップのトラックはCarmen Perryのゆったりとしたヴォーカルのスタイルに完璧にマッチしている。Cheekfaceは“That Thing You Do”を奇妙で優しくささやくようなハーモニーと共に晴れやかなドゥー・ワップ・チューンに作り変えている。Charli Blissはおなじみのギター・ロック・サウンドを捨て、ドキドキ感のあるシンセでJosie and the Pussycatsのアンセム“Pretend To Be Nice”を演奏しているが、Eva Hendricksはまさにこの曲を歌うために産まれてきたかのようである。
でもやっぱり一番際立っているのはAli KoehlerによるFountains of Wayneのファンに人気の曲“Hackensack”のカヴァーである。The Vivian Girls/Upsetのメンバーである彼女はオリジナルのにわか雨の後の輝きを、ダークでローファイな解釈に読み替え、この曲の持つ刺すようなメランコリーを増幅している。インストゥルメンタルとデリヴァリーはFountains of Wayneのヴァージョンをひっくり返すようなものであるが、その即時に聴いてそれとわかるフックはどうしようもなくSchlesingerなのである。これがとてもうまく行っているということが、このコンピレーションの要点を強調している。Schlesingerは亡くなってしまったが、彼の曲のレガシーは永遠に残り続けるのである。
By Eli Enis · June 17, 2020