海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Ashraf Sharif Khan & Viktor Marek, “Sufi Dub Brothers”

Ashraf Sharif KhanとViktor Marekはもう十年以上に渡って共作を続けているため、2人のサウンドを説明するような別名を持っていてもおかしくなかったのだが、『Sufi Dub Brothers』という今回のアルバムタイトルがまさしくそうなのかもしれない。Khanの複雑なシタールの演奏とMarekの折衷的なドラムとプロダクションを組み合わせ、この2人は古典的なメロディを幅広いエレクトロニック・ミュージックの構造と融合させている。時にジャングルや激しめのダンスへと漂っていきながら、伸縮自在のアシッド風味のある雰囲気が10曲の中を貫いている。

パキスタンのラホールで生まれたKhanは南アジアの音楽家たちに特有の長い伝統に属している。伝説のシタール奏者=Ustad Mohammad Sharif Khan Poonchwaleyの息子である彼がMarekと作業することで、彼はその創作相手のヘヴィなプロダクションに合わせるかのように、控えめな演奏スタイルから少し歩み寄っている。ドイツ人のMarekはインダストリアル〜エクスペリメンタル風味とIDM風のサウンドを持ち寄り、ポスト・パンク・バンド=Abwärtsの楽曲 “Maschinenland” をTin Man風のアシッド・スタイルのフックでアップデートしているが、そこにKhanの歪んだシタールの音色が入ってくる。“Kuch Karo” や “Monstertrucks” と言った楽曲は急激に盛り上がりを見せるが、通常であれば空間をたっぷり使うシタールの演奏を熱狂的な3分間の爆発の中に圧縮しているのである。これまでのEPに比べるとメロディはより暗く、激しくなっている。この不安定な時代を予言していたかのように。

By Ravi Ghosh · August 27, 2020

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