海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Neptunian Maximalism, “Éons”

123分、フィジカル盤では3枚組CDである『Éons』はベルギーのNeptunian Maximalismの新作であり、見たまんまの重量感ある作品である。例えそうだとしても、このプロジェクト――2018年にマルチ奏者のGuillaume Cazaletとサックス奏者のJean-Jacques Duerinckxによって結成された――のサイズや規模は決して不必要だったり過剰には感じられない。この適切に名前がつけられたコレクティヴがヘヴィーなサイケ、トライバルなリズム、フリージャズ的な幻惑的精神状態、瞑想的なドローンやそれらの中間にある広大で影のついた空間を探求するにはこれくらいのランタイムが健全であると言える。4曲入りのEPとほとんどインプロヴィゼーションライヴ・アルバムがNeptunian Maximalismの野望をほのめかした後に届けられた『Éons』はそれらの初期の期待に完全な形で応えている。この音の抒情詩はバンドが自由に放浪する空間を与えているだけでなく、人間の支配による人新世の終わりと、高等で知的な像によってこの星が支配される“probocene”の時代の到来を創造するコンセプチュアルな枠組みに従ったものとなっている。

それゆえに、『Éons』には毛むくじゃらでおぞましい獣の群れのようにけたたましい咆哮を上げる瞬間もある。しかしアルバムには保脳に照らされた宗教的な儀式を思わせるセクション(チャンティングと儀礼用の太鼓も使われている)もあり、『Ascension』期のJohn Coltraneを思わせるようなサウンドが魅惑的な黒魔術の装いに包まれたかのように聴こえる箇所もある。“Lamasthu”の金属音のよろめきはドローンメタルのマスター、Sunn O)))を思わせる。その1曲後、“Ptah Sokar Osiris”の健全な自由奔放さ、ホーンが多用されたグルーヴは、大抵のドローン音楽よりもグローバルな影響を持っているGoatのようなバンドと並べたくなってしまう。Neptunian Maximalismをこれ程面白い素材にしているのはその二分法である。ある瞬間には彼らは港から出ようとする不格好な船がその金属面をこすっているようでありながら、次の瞬間にはその甲板で行われている奇妙なインターステラー・ダンス・パーティのようでもある。彼らをSunn Ra A)))rkestraと呼ぶのはいささか的を得すぎているかも知れない。

By Ben Salmon · June 22, 2020

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