海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Holy Hive, “Float Back to You”

夏の昼下がりに空に浮かぶひとすじの雲のように軽やかに見えるかもしれないが、Holy Hiveの『Float Back to You』の中心にある核はダイナミックなものである。バンドの土台を作っているのはSharon Jones、Amy Winhehouse、Bruno Mars、Charles Bradleyなどと作業したこともあるHomer Steinweissによるピンと張りつめたパーカッションである。Joe HarrisonのゆったりとしたベースラインはPaul Springsの柔らかく高温のヴォーカルとSteinweissを結び付け、このニューヨークの3人組によるデビュー・フル・アルバムを、柔軟で私たちの心を惹く作品に仕立て上げている。

『Float Back to You』を駆動させているのは深い切望の感覚であり、それは曲のタイトル――“Oh I Miss Her So”、“Float Back to You”、“Be Thou By My Side”、“You Will Always Be By My Side Forever”――からも明らかである。しかしこの切望は不安から生じる類のものではなく、情熱や熱心さにインスパイアされている感情である。いわば外向きに開かれた愛であり、所有欲に毒されたものではない。3人は様々な楽天さの陰の間を器用に滑っていく。ソウルに寄った1曲目の“Broom”からはじまり、“Red Is the Rose”ではサイケデリックに接近。ホーンが時おりきらめきを与え、その暖かな輝きはしばしば光を放つほどの温度に達する。Holy Hiveはゆっくりと燃え広がるようなそのグルーヴの瞬間を利用し、より開かれた気楽なアルバムを作ろうとした。『Float Back to You』はじっくりと濾過されたような、そんな作品である。

By Allison Hussey · May 27, 2020

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