海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Chouk Bwa & The Ångstromers, “Vodou Alé”

6人組のミジク・ラシン(ルーツ・ミュージック)バンドのChouk Bwaとダブ・デュオThe Ångstromersによるデビュー作『Vodou Alé』は熱狂的な、38分間の祝祭である。ハイチのヴードゥーにルーツを持つChouk Bwaの音楽は伝統的な打楽器(手で叩くものととバチを使うもの)を中心に組み立てられるもので、催眠的で繰り返されるリズムを叩き出す。最初の勝ち誇るようなリズム—肌の下で鼓動する心臓のように、霧のようなシンセの中を轟かせながら抜けていく—から、このアルバムはテクスチャ―と速度の実験を繰り返し、我々を元気づけるとともに魅了してやまない一連の楽曲が続いていく。

作品を通して、Gomez “Djopipi” Henris、Sadrack “Mazaka Lakwa” Merzier、そしてJean Rigaud Aimableの3人のドラムがお互いの上に複雑なリズムをさらに重ねていき、それぞれの曲をエネルギー的な限界まで引き上げた後、見事にその曲を取り戻していく。一方で、砂っぽい声のシンガーJean Claude “Sambaton” DorvilとMaloune PrévalyとEdèle “Sasufi” Josephによるコーラスがスピリチュアルなコールアンドレスポンスのメロディーを歌う。回復と救済について歌われたこの歌詞の内容を理解していようといなかろうと、魂を掻き立てられるだろう。Nicolas EsterleとFrédéric AlstadtのThe Ångströmersはドラムのエネルギーと共に上下するような、ぶんぶんというシンセ・ベースを付け足している。インスト曲“Kay Marasa Dub”での引き伸ばされ振り子運動をしているような、深くこもったドラムの震えた音や、ほぼアカペラの曲“Peleren”で聞かせる増幅されたコオロギの鳴き声とキラキラ光る電子音など、その注意深いサウンド・デザインがこの音楽を聞き手にぐっと近づけ、まるで触れることのできるような感覚を与えている。『Vodou Alé』は古代の音と現代の音が楽しく混ざり合っていて、アーティストが違った音楽的時代やジャンルを超えた橋をかけるとき、イノヴェーションが起こるのだという好例である。

By Ann-Derrick Gaillot · May 22, 2020

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