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<Bandcamp Album of the Day>Bishop Nehru, “Nehruvia: My Disregarded Thoughts”

2012年、Bishop Nehruはデビュー・ミックステープ『Nehruvia』を自主制作でリリースした。物憂げな雰囲気のその16歳は人生についての大人びた考え方と、酩酊感のあるループと愉快で朦朧としているドラムの上でライミングする能力を世界に示した。ニューヨーク北部に住むNehruはすぐに伝説的カルト・ラッパー、DF DOOMとの創作的な絆を築き上げ、2014年にコラボ作『NehruvianDOOM』をドロップするなど、この一匹狼のスーパーヴィランとメンター・生徒のような関係性を追い求めた。DOOMの影響はNehruのその後の作品にも多く見られたが、彼の最新作『Nehruvia: My Disregarded Thoughts』は彼が「成人した」作品のように感じられる。彼の類まれな音楽的ヒストリーにもしっかりと目配せをしながら、Nehruのアーティストとしての成長が次のフェイズに入ったことを知らせるような作品となっている。

精神的隷属を乗り越えることについての一連の楽曲群であると広く信じられているこのアルバムは“Colder”で幕を開ける。気味悪くぶつぶつと呟くようなシンセと縮められたスネアは、Nehruが「日々がどんどん冷たくなっていく」と感じている世界で神と悪魔両方に試されることになるこの曲の背景として機能する。このアルバムの13曲を貫いている内省的な底流が存在し、Nehruのデリヴァリーはそれ自体が順応性のある楽器であることを証明しており、様々な音楽的状況にもアジャストして適応する。“whydoesthenightskytalktome?”ではブルージーアコースティックギターのバッキングに乗せ、歌うようなフロウでこう嘆く。「こんな考えにとらわれて、頭から離れないんだ」“little suzy (be okay)”はピアノを中心としたトラックの上で、依存症と闘いながら「ホームと呼べる場所を探している」孤独な人物を描写した曲だ。

神出鬼没のDOOMもこのアルバムには当然客演で参加し、“METAHEAD”ではしなやかなジャズ・サイケのループの上で甘ったるい抽象画を描いている。しかし『Nehruvia』で見られる成熟を象徴しているのは“Too Lost”でのDJ Premierとの共演である。Premoのトレードマークである角張ったブーム・バップではなくメロディックなピアノの上で、Nehruは彼の中の「内なる子ども」と会話し、自分がどこから来てどう変わったのかを振り返っている――抜け目なく、彼のキャリアの最新のステージを精算しているのだ。

By Phillip Mlynar · May 06, 2020

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