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<Bandcamp Album Of The Day>Malena Zavala, “La Yarará”

ロンドン在住、アルゼンチン出身のMalena Zavalaは2018年の崇高なデビュー・アルバム『Aliso』で自身の生々しい感情をさらけ出した。そして彼女は『La Yarará』において更に深く掘り下げる術を見つけている。クンビア、レゲトン、アフロファンク、アルゼンチン・フォーク、ボレロ・ソン、そして英国・米国の音楽からの引用が見られる、濃密に層をなしている音楽によって、『La Yarará』はスリリングでカラフルで多文化的なポップの未来を示すとともに、英語とスペイン語の両方で歌うZavalaをこのジャンルにおける最も洗練された実践者の一人であると決定づけている。

1曲目“What If I”は花開くような可能性についての賛歌であり、Zavalaは自分が知っていること、あるいは自分が周りからどう見られているのかということから逃れるために払わなければいけない犠牲について振り返っている。「もし私が一夜にして逃げ出したら?他の人達がそうしたようにあなたも私のことを忘れてしまう?」彼女は尋ねる。「彼らは見られるためのチャンスを求めて何もないところからやってくる」曲が進んでいくと、その止めどない不安は輝かしい幸福感へと変わっていく。彼女は正しい選択をしたのだという肯定。自信たっぷりに歌われるタイトル曲では色鮮やかなトランペットと鋭く対位法的なパーカッションを歪んだキターと濃密で渦巻くような雰囲気が組み合わされている。もっと希薄な瞬間もある:軽快で繊細なヴォーカルのメロディとそれでいて耳から離れないエネルギーを持つ“I'm Leaving Home”はウェールズのアーティスト、Cate le Bonのダークなポップを想起させる。

彼女と同世代のアーティストなら感情が迷子になってしまいそうなところでも、Zavalaはこの『La Yarará』の中で、一貫して新しいアップビートなスタイルを持ち込むことによって作品全体を軽い雰囲気にしている。彼女が「故郷を去る」ことについてくよくよと考えているときでも、ムードは至ってほがらかで楽観的で、前向きなのである。

By Sarah Gooding · April 17, 2020

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