海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album Of The Day>Various Artists, “Doom Mix, Vol. IV”

2017年に『Doom Mix』シリーズの第一弾がリリースされた時、それは美的な目的もそうだが実用的な目的を果たしているように思われた。TarkamtJeremy BibleHOTT MTといったまだ好事家たちに補足される前のアヴァン・エレクトロニック・アーティストによる楽曲を収録したこの作品は当時まだ発足後間もなく、まだ7つのリリースしかなかったDoom Tripレーベルへのイントロダクションであった。そのシリーズの発足作から今月の4篇目に至るまで、多くのことが変化した。Doom Tripは物好きが好む奇抜な存在から、Pale SpringDiamondsteinSangamらのアルバムをリリースし、Tiny Mix Tapes、Dazed Digital、Resident Advisorといったシーンのご意見番たちから好評を得るような、カルト的な尊敬を集める存在となった。『Doom Mix』シリーズもまた、無名レーベルによる挨拶代わりの握手から、成長するエクリぺリメンタル・エレクトロニック・シーンを注意深く切り取ったドキュメントへと成長したのである。この4篇目にはFire-ToolzNmeshMukqsDntelといった高名な冒険家たちのトラックが収録され、これまでで最も強力なものとなっている。

音楽的には、この作品は最も本能的で即時的でもある。リズムに対してのアプローチが革新的であるということによって特徴づけられるアーティストを集められているという点で、『Doom Mix IV』は以前よりもより身体的に感じられる。Nmeshの“Cimcool 15KV Distribution”では忙しないドラム・トラックの上にSF映画から取られたヴォーカルの断片が重ねられているー2分30秒過ぎでは、Bomb Squadが昔のPublic Enemyの作品でやっていたようなヘヴィなベースの一撃にアプローチしていく。Hausu MountainのMax Allisonの別名義であるMukqsは得意とする狂った楽曲(頭蓋骨すら割ってしまうようなベース・ドラムの上でピッチの高いシンセが跳ね回る)を提供している。漂うようなアンビエンスが特徴のDiamondsteinとSangamでさえ、ほとんどドラムンベースのような、激烈なパーカッションの曲を提出している。

心が休まる一瞬もある。昨年の『CYGNUS』がひっそりとした喜びだったPale Springが提供しているのはエレガントなトーチ・ソング“Dripping”であり、Pauline Layによるアルバムの締めくくり“Mornings By the Sea”ではからっぽの空にさざなみのような鍵盤が浮かんでいき、最後の祈りのような静けさを持っている。しかし『Doom Mix IV』全体に広がっているムードはめまいがするほどの高揚感とすさまじい運動のそれであるー永遠に続く「おうち時間」の期間にはうってつけの、あなたの鼓動を速めてくれる一枚だ。

By J. Edward Keyes · April 09, 2020

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