海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album Of The Day>Thundercat, “It Is What It Is”

Thundercatの音楽は美しいまでにぶっ飛んでいる。それはPファンク、R&B、LA産のエレクトロニック・ミュージック、そしてロックが融合したJaco Pastorius風の先進的なジャズ・フュージョンである。彼は考えられないほどのスピードでベースラインを弾いたかと思うとゆったりとした音色を奏で、その切替は予測不能である。そして彼が持つ誠実さと脆弱性によってその奇抜さと可笑しさは和らげられる。

彼の4作目『Is Is What It Is』はこれまでの作品に比べるとゆるい作りで、インプロヴィゼーションと生の感情を大切にしている。この作品は銀河の間を駆け抜ける宇宙船が停止し、漂い、そして再び動き始めるまでに乗組員が書き留めた日記であり、告白の文章である。(プラトニック/ロマンティック双方の)繋がりの探求というのがThudercatのキャリアの中で最も有力なテーマの一つであるが、『It Is What It Is』の中心的な主題はまさにそれだ。親友を失い―“Fair Chance”で彼は故・Mac Millerの死を嘆いている―、破局騒ぎを切り抜けたあとにあって、彼が人との絆を探し求めるのは理にかなっている。

作品の中ではそのような旅が様々な形で繰り返されているが、“I Love Louis Cole”やリード・シングルの“Dragonball Durag”彼の音楽もエキセントリックな極地に達している。前者はほぼパンク調のパーカッションをバックに、アニメのオープニングのスピードで演奏されるジャズ・ファンクフュージョンである。Coleと演奏することは愉しみであり、それは悟空とピカチュウが共存する銀河で巻き起こる、アルコールが入ったブロマンスである。最後にはThundercatは意識を失い、凄まじいソロで超サイヤ人の完全体となる。一方、“Dragonball Durag”はファンキーでスロウなR&Bである。不条理主義者の色目でありながら、一方では様式的な承認と仲間意識に対する懇願でもあるこの曲は、Thundercatらしさ全開のおかしくも感動的な1曲だ。

By Max Bell · April 03, 2020

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