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<Bandcamp Album Of The Day>Jeffrey Silverstein, “You Become The Mountain”

今ほど不安が強い時期でなければ、Jeffery Silversteinの『You Become the Mountain』は日曜の朝の誠実なお供になっていたかもしれない―コーヒーのカップを片手に座りながら、夜明けに疲れた目から睡眠をこすり落としながら聴く、今週の1枚。

東海岸のインディー・ロックのOBであり、太平洋岸北西部に移り住んだSilversteinは新しい住処からの景色、特別教育の教師としての慎ましい経験、そして耐久スポーツのようなマントラの繰り返しをこれら9つの柔らかな楽曲の中に織り込んでいる。これらはまとまりとして深いあくびのような暖かさを持って聞こえてくる。ペダル・スティールの琥珀色の輝きによって縁取られ、シンプルにプログラムされたビートによって錨を下ろされたSiversteinは、David Bermanを思い起こさせる皮肉めいたきらめきと共に愛犬について歌い、それはEconoline Bill Frisellのようなゆったりした優雅さをもって背景の楽器陣の中を滑空していく。

しかし我々が生きているこの現在において、『You Become the Mountain』は毎日の儀式のように感じられる。価値や意味といった束の間の感情の積み重なりを残してくれるような、38分間のヨガ。ガレージセールで売られている漂流物をざっと眺め、Sliversteinはマインドフルネス瞑想の導師ジョン・カバット・ジンの中古テープの山を見つけ、旧友の笑顔のような心地よさを放射する1曲目“A Dog's Age”の中で、遊んでいる楽しそうな子供の音声と一緒にサンプルしている。「ここに座っていると、山の重厚さと静けさ、そして威厳を共有することになる」とカバット・ジンは言う。曲も終わりに差し掛かり、ギターが雲のように彼の周りをついてまわると、彼は続けてこう言う。「あなたは山になるのです」と。

このような心地よい承認の感覚は、"Door at the Top of Your Head "のインストゥルメンタルの呼気から"Easy Rider "の素朴な美しさまで、レコードの残りの部分に波及している。そこでSilversteinは自分自身に親切にすることと自分の将来の展望についての禅問答を甘美に詠唱している。「自分自身を過ぎ去る雲に変えよう」と歌う彼の優しい歌声は、球根のようなカントリーベースとペダルスチールのラインの上を覆い、無限の地平線を暗示している。「あなたが誇りに思う何か」。それは皮肉屋のニューエイジステレオタイプのような、少し安っぽい言い方に聞こえるかもしれない。確かにそうだが、それだけではなく、あまりにも美しく心を落ち着かせてくれるため、ほんの一瞬だけでもSiversteinと共にじっと座り、日常の不安よりも良い何かを信じるための時間を過ごしたいと思うだろう。

By Grayson Haver Currin · April 01, 2020

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