海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album Of The Day>Wake, “Devouring Ruin”

この十年間の大半の間、カルガリー出身のWakeはメタルの中でも、かつてはかなり厳格だった境界線の中を自由に踊り回ってきた。根っこはグラインドコアにおきながらブラック・メタルへと枝を広げ、激烈なノイズにまっしぐらに向かったと思えばドゥームと一度となく戯れてみせた。彼らの最高傑作―2018年に大騒ぎを巻き起こした、黒曜石のような雰囲気によって刺激されたグラインドの痙攣が続く『Misery Rites』―は彼らの大胆で覆い尽くすような4作目『Devoruing Ruin』のためのテスト・ランでしかなかったことがわかった。社会の厳格さが我々の自己懐疑の内部サイクルを強化してしまうことについて(そして我々が持つそのパターンを壊すことのできる能力について)のコンセプト作のようなものである『Devoruing Ruin』はそういった恣意的なジャンルの壁をついに乗り越え、Wakeはそれらの壁によじ登り自らが作り上げた領域を見下ろしている。彼らが聞かせる純粋な気分と力の46分間に身を任せることは今、とてもいい気分がする。

Wakeは未だに悪意に満ちた元気のよくメチャクチャな曲をやるのが好きなようだ:“In the Lair of Rat Kings”はまずブラスト・ビートに向けてダッシュした後、逆向きによろめき、そして頂点捕食者の如き力で突き刺してくる。すると彼らはこのような冗長な非難にたいしてインストゥルメンタルの“Elegy”や陰鬱な1曲目“Dissolve and Release”のような、心に残るようなムーディーな楽曲で対抗している。しかし『Devoruing Ruin』が最も衝撃的なのは、“Kana Tevoro (Kania! Kania!)”のようにWakeがこれらのイディオムを重ね合わせる(もしくはその間を行き来する)瞬間である。民俗学的な物語やスピリチュアルな悪夢にインスパイアされたこの曲はグラントやグロウル、そして容赦ないドラムの弾幕の中を掘り進んでいく。しかし遠くの方から聞こえる絞首刑執行人のようなリフ、フィードバック・ノイズの叫び声、そして気を切るような低い音色がNeurosisの“千ヤードの恐怖”を想起させる。南部精神を共有するInter Armaやシンフォニックな悪党たち・Dead to a Dying Worldのように、Wakeはヘヴィ・メタルの隠された隙間に新たなエネルギーを見出している。彼らが見下ろしているのは彼らが「底知らずの苦しみ」とけなしているものだとしても、その発見の音は勝利の響きである。

By Grayson Haver Currin · March 31, 2020

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