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<Bandcamp Album Of The Day>Mortar Devotions, “Operazione Piovra: The Lead Chronicles”

『Operazione Piovra: The Lead Chronicles』はイタリアの歴史の中の2つのうす暗いエピソード―政府とマフィアの抗争と「鉛の時代」の政治的暴力―にインスパイアされた架空のサウンドトラックである。17人が死亡した1969年のミランでの爆破事件によって始まり、1988年の赤い旅団による民主党上院議員Roberto Ruffilliの暗殺によって幕を閉じたこの「鉛の時代」の死者は400人と推定されている。

ヘルシンキを拠点とするMortar Devotionsはイタリア出身のNona Et DecimaとここではОгниと名乗っているAleksei Tsernjavskiによるコラボレーションである。その結果できあがったのはピンと張り詰めた―時にこぶしで打つような―映画インダストリアル音楽のコレクションである。

『Operazione Piovra: The Lead Chronicles』は5つの部分に分かれている。Part IとIIはもっともシンセウェイヴやホラー映画のサントラに負うところが大きい。前者は5分半が経過したところでベースのような爆発が起こるまでゆるやかに波立っている、繰り返されるメロディックなシーケンスによってずっしりとした重みを持つ。後者はこのアルバムの中で最もビートを基調とした楽曲であり、最も記憶に残る楽曲だ―強力で脈打つようなキックと煮えくり返るようなシンセのラインが、銀行強盗の計画(もしくはゴス・ダンス・ナイト)にぴったりな、キャッチーで否応なしに活発にさせるようなトラックを作り上げている。

最後の3曲にもメロディックな要素はあるが、Mortar Devotionsはのこの作品のテーマを象徴するような殺伐とした閉所恐怖症の緊張感のある雰囲気を巧みに作り上げていく。フィナーレに相応しい“Part V”はポスト・インダストリアルの混沌へと身を投じる。機械は唾を飛ばすように動き回る。シンセサイザーは叫ぶ。音が消える頃には、破壊すべきものは殆どなくなってしまっている。

By Jordan Reyes · March 10, 2020

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