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<Bandcamp Album Of The Day>Son Rompe Pera, “Batuco”

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ayarecords.bandcamp.com

植民地化と大西洋奴隷貿易によってマリンバがアフリカから中央アメリカに伝わってから何世紀も経つが、それでもマリンバはラテン・アメリカン民俗音楽のなかで必要不可欠な役割を果たしている―主に使用される楽器としてだけではなく、こんにち私達が理解するような慣習を形作った文化的な拡散の写し鏡として。Jesús ÁngelとAllan Gamaの兄弟(別名をKachoとMongoという)にとって、それはメキシコ・シティで育った彼らに楽器の演奏を伝えた父親・Batucoを象徴するものでもあった。彼らが新しく始めた5ピースバンド・Son Rompe Peraはこのメロディーを奏でる打楽器を中心に編成されている:ギロ、コンガ、ドラム、ギター、そしてベースをバックに、彼らはマリンバを駆動力とするパンク・クンビアを演奏している。それはラテン・アメリカン・フォークとガレージの精神を通過し、さらに父親(とその祖先たち)によって教え込まれた楽器の伝統を引き継いだものである。

その父親を偲んで名前がつけられタコのグループのデビュー作は個人的/普遍的歴史双方を凝縮したものである:父親が教えてくれたこと、子供の頃まちなかで流れていたメキシコ〜ペルー〜コロンビアのフォークの古典たち、パンクやロカビリー、スカのバンドで演奏していた頃に獲得した反抗的な美学。最初から最後まで徹底的に汎ラテンの作品である『Batuco』はメキシコ(Lalo Guerrero's Pachucoのヒット“Los Chucos Suaves”)、コロンビア(Super Grupo Colombiaによるクンビアの古典“Pájaro Cenzontle”)そしてチリに目配せをしながら、全くそのサウンドの魅力を減ずることなくローカルなシーンの精神を伝えている。チリのクンビア・バンドChico Trujilloがヴェネズエラのオルガン奏者Tulio Enrique Leónによって1960年代に有名になった“Cumbia Algarrobera”という楽曲に参加している。Batucoその人と共に録音されたこの作品で、Son Rompe Peraは伝統的なクンビアを転覆させ、古典の楽曲に遊び心と愛をもって新しい命を吹き込んだのだ。

By Matthew Ismael Ruiz · February 28, 2020

Son Rompe Pera, “Batuco” | Bandcamp Daily