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<Bandcamp Album Of The Day>Parlor Walls, “Heavy Tongue”

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parlorwalls.bandcamp.com

ノー・ウェイヴとは相反という考え方に基づいて成り立っている音楽である―それは不協和音のメロディと、ノイジーで好戦的なテクスチャが交互に立ち現れるサウンドのローラーコースターである。ブルックリンのグループ・Parlar Wallsはその精神を最新作『Heavy Tongue』で受け継ぎ、彼らが「反メロディ」と呼ぶ種類の音楽を作り上げた。Alyse LambとChris Mulliganの2人によるデュオは2018年のEP『EXO』を特徴づけていた脈打つようなパーカッションと“シーツ・オブ・サウンド”も保持しつつ、それを生々しく、本能的なエネルギーへと削ぎ落としている。

『Heavy Tongue』は決して解消されることのない緊張の上に成り立っている。1曲目“BIrds of Paradise”の中で、タイトで指すようなギターと執拗な低音のドローンの下で槌を打つように繰り出される雷のようなドラム・パターンはBudgieがThe Creaturesで使用した儀式のようなビートを想起させる。Lambのヴォーカルは手招きと脅迫を行ったり来たりする。“Lunchbox”では落ち着きのない鍵盤とハンマーのようなドラムの上で彼女は「これがあなたが憧れている力なの?それともあなたが追い求めている愛なの?」脅すように繰り替える。対照的に“Violets”―アルバムの中で最もポップよりの楽曲である―では彼女はTina Weymouth風の喋り口調の歌と、ジェントルでメロディックな歌唱を鮮やかに往復してみせる。最後の曲“Rails”では彼女の声はインダストリアルな鼓動とギターの節だったもつれの上で奇妙に浮遊している。これらのような瞬間はParlor Wallsが完全に「反メロディ」ではないことを示している。しかし二人の音楽は最も明るい瞬間でさえノー・ウェイヴの相反する精神を保っていて、すぐ知覚に嵐が感じられるのである。

By Andi Harriman · February 24, 2020

Parlor Walls, “Heavy Tongue” | Bandcamp Daily