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<Bandcamp Album Of The Day>Citizen Boy & Mafia Boyz, “From Avoca Hills to the World”

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gqomoh.bandcamp.com

『From Avoca Hills to the World』はゴム(Gqom。南アフリカのエレクトロニック・ミュージックの一種)の勃興を、その主要な提唱者の視点から紐解いている。その人物とは21歳のプロデューサーにしてクルー・Mafia Boyzの一員でもあるCitizen Boy。それは素晴らしく魅力的な旅路であり、この作品にはゴムが世界的な注目を浴びる前/浴びるようになったその最中/浴びるようになった後に書かれた楽曲が収録されている。

このコレクションに収められた最初期の楽曲、2013年の“Uhuru”はこのサウンドの発達段階の姿を捉えている。楽曲のアレンジは貧相である:多調のギロと軽快に走るキック・ドラムが6分間の楽曲の下地を作り上げる中、こもったドローンと時たま鳴らされるヴィブラスラップが軽い装飾を付け加えている。予想不可能な構造、無骨なハーモニー。それでいてこれらの楽曲はアパルトヘイト後の南アフリカの暗い寝室にいる十代のプロデューサーの内省的な性格を感情的に想起させる。2017年や18年の楽曲と比べると、この“Uhuru”には明らかに優しさが感じられる。そしてその優しさは時が経つにつれてより大胆で、より華美で、より切迫感と前進する勢いを増したサウンドに取って代わられた。

2017年の“Dark City”は初期のような重苦しさと催眠的な性質を保っているが、さらに運動と変化が加えられている—ドローンは満ち引きを繰り返し8小節ごとのフレーズの終わりには鋭く尖った頂に到達する。するとそこで新たなパーカッションの要素が導入されるのだ。一般的に周縁的な音楽のムーヴメントがメインストリームに流入していくと、もともとそれを際立たせていた性質というのはできるだけ多くのオーディエンスに膾炙するために希釈されてしまうものだ。『From Avoca Hills』にはそういったことは見られない。あるとしても、サウンドがより熱狂的になったと感じられるくらいだ。Citizen Boyはゴムのスピリット、スタイル、美学を保った。もし後進たちが彼に惹かれたとしても、それは彼の思い通りになるだろう。

By Jared Proudfoot · February 19, 2020

Citizen Boy & Mafia Boyz, “From Avoca Hills to the World” | Bandcamp Daily