海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

<Bandcamp Album Of The Day>Mr. Scruff, “DJ​-​Kicks: Mr. Scruff”

DJ-Kicks: Mr. Scruff by Mr. Scruff Fuseによるオンライン・シリーズ「Crate Diggers」のエピソードの中で、Mr. Scruffは「僕がプレイする―厳密にはミックスしているわけだけど―レコードはどれもそれ自体優れている。あまり手を加える必要はないんだ」と語…

<Bandcamp Album Of The Day>Master Boot Record, “Floppy Disk Overdrive”

FLOPPY DISK OVERDRIVE by MASTER BOOT RECORD コンピューター中毒の“メタルチップチューン”作曲家のMaster Boot Recordによる最新作『Floppy Disk Overdrive』はこれ以前の7作の包括的なリブートのように感じられる。ゲーム・プレイはいつもどおり―ヘヴィ・…

<Bandcamp Album Of The Day>Witch Prophet, “DNA ACTIVATION”

DNA ACTIVATION by Witch Prophet この『DNA ACTIVATION』において、トロントを拠点とするシンガー・ソングライター、Witch Prophetは個人的なアイデンティティを探求し、それを家族というものと文化的に自分が受け継いでいるものとが交差しているところに位…

<Bandcamp Album Of The Day>Jamie 3:26, “A Taste of Chicago”

Jamie 3:26 presents A Taste of Chicago by jamie 3:26 ハウス・ミュージックの誕生した土地であり精神的なメッカでもあるシカゴで生まれたDJ/プロデューサーのJamie Watson(a.k.a. Jamie 3:26)はこの度、10年以上に渡ってダンスフロアをわかせてきたエ…

<Bandcamp Album Of The Day>Hailu Mergia, “Yene Mircha”

Yene Mircha by Hailu Mergia Hailu Mergiaの音楽を一つの言葉やラベルでくくろうとするのは愚か者のすることである。このエチオピア生まれのマルチ奏者はジャズ、ファンク、そしてエチオピアのポピュラー音楽を融合させたパイオニアとして母国で名声を得た…

<Bandcamp Album Of The Day>Quinton Barnes, “AARUPA”

AARUPA by Quinton Barnes アーティストの中には制限をいかに取り払ってしまっているかという点しか分類できないものがいる。ポップ、ソウル、R&Bの説得力のあるエネルギーから、エクスペリメンタルな空間への勇気ある探求へと容易に移行するトロントのQuint…

<Bandcamp Album Of The Day>Adrian Younge and Ali Shaheed Muhammad, “Jazz Is Dead 001”

Jazz Is Dead 001 by Adrian Younge and Ali Shaheed Muhammad 『Jazz Is Dead 001』の背後にあるコンセプトは現代のプロデューサーであるAdrian YoungeとAli Shaheed Muhammadを一連の尊敬されているジャズ・ミュージシャンと組ませ、60年代や70年代に彼ら…

<Bandcamp Album Of The Day>The Legendary Ingramettes, “Take A Look In The Book”

Take a Look in the Book by The Legendary Ingramettes 60年近く前、シンガーでピアニストであり活動家でもあったMaggie Ingramは、その後ゴスペル音楽の組織となる歌唱集団を結成した。現在はその娘であるAlmenta Ingram-Miller師と孫であるCheryl Maroney…

<Bandcamp Album Of The Day>Prolaps, “Pure Mud Volume 7”

Pure Mud Volume 7 by Prolaps Prolapsはこの『Pure Mud Volume 7』という、Abletonのノイズ・クリップとBPM160の純粋な良きものの調合を濾過した抑制されていないニュー・インターネットの作品において、聴き手にすべてを投げつけている。Machine GirlのMat…

<Bandcamp Album Of The Day>Porridge Radio, “Every Bad”

Every Bad by Porridge Radio ブライトンのグループ、Porridge Radioによる2作目の序盤に収録されている“Don't Ask Me Twice”でリード・ヴォーカリストのDana Margolinは「自分が何を欲しているかわからない、でも自分が何を欲しているかわかってるんだ」と…

<Bandcamp Album Of The Day>Container, “Scramblers”

SCRAMBLERS by CONTAINER Ren SchofieldがContainerとしてここ10年でリリースした作品は互いに補い合うようなものだった。彼はすべて『LP』と題された4枚のノイズ・テクノ・アルバムをリリースしてきたが、それはどれもハードコアやミニマル・テクノに影響さ…

<Bandcamp Album Of The Day>Pharoah Sanders, “Live In Paris (1975)”

Live in Paris (1975) by Pharoah Sanders 1975年には、Pharoah Sandersは嫌々ながらフリー/スピリチュアル・ジャズの世界でスターとなってしまっていた。彼は有名になろうとはしていなかった。ニューヨークで住む場所もなく、食べ物のために自分の血液を売…

<Bandcamp Album Of The Day>Snarls, “Burst”

Burst by snarls オハイオ州コロンバスにはいくつかの自慢の種がある―州都であり、大学フットボールのメッカであり、ファストフード・チェーンの試験場でもある―が、オハイオ州のもつロックンロールの業績は申し分ない一方、この州で最大の都市であるコロン…

<Bandcamp Album Of The Day>Various Artists, “INTENTA: Experimental & Electronic Music From Switzerland 1981-1993”

INTENTA Experimental & Electronic Music from Switzerland 1981-93 by Various Artists DécaléレーベルのMatthias OrsettとMaxi FischerはLes Disques Bongo Joeと共同でこのチャーミングな「驚異の部屋」を編纂した。両レーベルは入念な発掘作業にフォー…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 26: 75位〜71位

Part 25: 80位〜86位 75. DJ Koze: “Pick Up” (2018) www.youtube.com DJ Kozeのすごいところは、トレンドに影響されることなく、軽いサイケデリックな霧がかかった温かくファンキーなトラック、切望や希望、悲しみを根源的な人間の痛みとして一つに束ねてし…

<Bandcamp Album Of The Day>Mortar Devotions, “Operazione Piovra: The Lead Chronicles”

Operazione Piovra: The Lead Chronicles by Mortar Devotions 『Operazione Piovra: The Lead Chronicles』はイタリアの歴史の中の2つのうす暗いエピソード―政府とマフィアの抗争と「鉛の時代」の政治的暴力―にインスパイアされた架空のサウンドトラックで…

<Bandcamp Album Of The Day>Brownout, “Berlin Sessions”

Berlin Sessions by Brownout Brownoutは多芸なバンドの典型であり、特異でありながら無節操でもある。テキサスはオースティン出身の9人編成のラテン・ファンク集団である彼らはカバー曲の強力さによって全国的な注目を集めた:彼らは『Brown Sabbath』にお…

<Bandcamp Album Of The Day>Axebreaker, “Vigilance”

Vigilance by Axebreaker Locrian、Holy Circle、Brutalistとしての作品で知られるボルチモアを拠点とするノイズ・アーティスト、Terence Hannumの最新作はその政治的なアジェンダを率直にさらけ出している。Axebreakerはアンチ・ファシストを標榜するパワー…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part13: 80位〜71位

Part 12: 90位〜81位 80. Aphex Twin: Syro (2014) 『Syro』という作品は、自分がそもそも何故エレクトロニック・ミュージックと恋に落ちたのか思い出したいときに立ち戻ってくる作品である。この作品を楽しむということは、完璧に遂行された作曲の基礎を心…

<Bandcamp Album Of The Day>Angelica Garcia, “Cha Cha Palace”

Cha Cha Palace by Angelica Garcia Angelica Garciaの新作『Cha Cha Palace』は場所と自信双方に対する肯定である。Garciaの文化的バックグラウンド―メキシコとエルサルバドルの血を引く第1世のアメリカ人―が彼女の作る音楽に反映されている。単に歌詞だけ…

<Bandcamp Album Of The Day>Rowland S. Howard, “Teenage Snuff Film”

Teenage Snuff Film by Rowland S. Howard Rowland S. Howardの死は早すぎて(まだ50歳だった)、クールすぎて、そしてこの四角い世界には美しすぎた。2009年の12月30日のことだった。HowardはNick Caveの最初のパンク・プロジェクト、The Boys Next Doorの…

<Bandcamp Album Of The Day>R.A.P. Ferreira, “purple moonlight pages”

purple moonlight pages by R.A.P. Ferreira 2018年10月1日、ラッパーのmiloはそれまでよく知られていたステージ・ネームを公式にやめる事を宣言した。何年もの間、本名・Rory Ferreiraはその名前を使って多くの献身的なファンを獲得してきた。ファンたちは…

<Bandcamp Album Of The Day>Cold Beat, “Mother”

coldbeatsf.bandcamp.com 2018年、オークランドのグループCold Beatは『A Simple Reflection』という7曲入りのEurythmicsのカヴァー作をリリースした。ガーゼのようなシンセとフロントウーマン・Hannah Lewの静かでゴスっぽいアルトが印象的な作品であった。…